K先生の事

唐突ですが、私がまだ若手外科医だった頃の話しを。

とある市立病院に勤務していた時の外科部長K先生のお話しです。

 

当時のこの病院の外科では、緊急の場合などはまずはK先生に電話で報告して指示を仰ぐルールになっていました。

当直の深夜、「これは緊急手術が必要だな」となると、まずはK先生宅に電話する訳です。

すると、K先生はどんな日でも(宴会が催された晩でも)どんな時間でもほとんどワンコールで電話に応答されるのです。深夜でも、明け方でも、です。

用件をお伝えすると「わかりました。ではT先生を呼んでオペ、やっといてください。よろしく」と言って切られます。

翌朝、医局でお会いすると「おはよう。昨夜はお疲れ様でした。患者さんはいかがですか?」と必ずニコニコ笑いながら尋ねてこられます。経過を説明すると「ありがとう。ご苦労様」とニコニコしながらねぎらってくれるのです。

 

いつでもワンコールで電話に出てくれる安心感。 これは駆けだしの若造にとっては本当にありがたいものでした。 将来、自分はこんな医師になりたいな、と思ったものです。

 

今、私は当時のK先生の年齢を超えています。

一人で診療所で働き部下のいない私は、K先生のように誰かに背中を見せている訳ではありませんが(それと、スマホは「ワンコールで受話器を取る」っていう技は使いづらいのですが)、それでも「できるだけ何時でも即、連絡のつく医師でありたい」と思っています。

 

「働き方」としては「ブラック」かもしれないし「ワークライフバランス」はかなり偏っているのかもしれませんが、私にはこの働き方が「性に合っている」ようです。 身体を壊さないよう養生しながらもうしばらくこの仕事を続けていければ、と考えています。  (T)